ダブテイル治具で有名なLeighによる、ホゾ穴(Mortise,モーティス)とホゾ(Tenon,テノン)を作るための治具です。
手工具から木工を初めて、少しずつ電動工具へ移行するときに、多くの人が角ノミ盤を購入します。日本では欧米のWoodworkerに比べて、この角のみ盤を持っている人の割合が高いように感じます。というのも、日本の伝統的な木工はまず、ノコギリ、ノミ、カンナから始まります。そして手工具であるノミを電動工具に変えようとしたときに、角ノミ盤にするというのは自然な流れだと考えられるからです。
ところが、この角ノミ盤の性能に満足している人はそれほど多くないと思います。特にベンチトップ(卓上)の角ノミ盤ですと、精度はあまり期待出来ません。また角ノミを研ぐのが難しかったりします。
私も普段はホゾ穴を開けるときは角ノミではなく、ルーターを使っています。角ノミの出番はほとんどありません。
このLeighのFMTはLeighお得意のテンプレートを使った治具で、ルーターを使い、精度よくMortise&Tenonの接合ができます。テーパーを使って微調整をするなど、とてもよく考えられています。
箱はずっしりと重いです。この箱を見て、FMTとはFrame Mortise and Tenon Jigの略であることを初めて知りました。部品は3つの箱に分けて入っています。
HSSのアップカットのスパイラルビットが1本付属しています。ソリッドカーバイトではなく、HSSなので切れ味を心配しましたが、とても良く切れます。切れ味がどれぐらい続くかはまだ未確認ですが。
このプレートにルーターを固定します。ルーターはプランジルーター(固定ベースではなく、ビットが上下できること)である必要があります。各社のルーターに対応できるように、いろいろな穴が空いています。ルーターのベースを固定するための固定ブロックも付属しています。またベースとルーターのアライメントに必要な治具も付属しています。至れり尽くせりです。このベースにルーターを固定する作業だけで、この治具の完成度の高さが感じられます。
裏面にはダストポートがあります。かなりの効率でダストを吸ってくれました。
材はモーティス、テノンともに垂直に固定します。ガッシリしたクランプが付属しており、強力に材を固定します。固定面はご覧のようにザラザラになっていて、材が滑るのを防いでいます。
まずはテノンを作ります。説明書の通りに、中心に印を付け、その印をガイドの中心へと合わせます。
次にテンプレートに合わせて一気にテノンを作ります。まずは外周部を軽くなでてから、中心部へと切削していきます。
複数の材があるときはそのまま材を入れ替えて、同じ作業を繰り返します。同一寸法のテノンを多数作ることができます。
モーティスを作ります。同じようにアライメントガイドへ中心のマークを合わせます。次にルーターのプランジ機能を使って穴を開けます。
これで完成です。微調節の機能があるので、モーティス、テノンの接合はピッタリです。注射器の先端を押さえて、シリンダーを抜くと「ピコン!!」と音がしますが、この接合もあまりにピッタリなので、同じように引き抜く時に「ピコン!!」と音がするほどです。
合わせたあとの段差もほとんどなく、ピッタリと合わさっています。角ノミ盤ではここまでの精度をだすのは難しいです。
テンプレートを変更することにより、テノン、モーティスの幅を調節します。またスパイラルビットの太さを変更することにより、テノン、モーティスの厚さを調節します。通常の使用であれば、付属のスパイラルビット1本でも十分のようです。
また椅子の脚など、角度をもった接合も、固定プレートを傾けたり、固定治具を斜めにすることにより、実現できます。
このFMTはモーティス&テノンという使い方だけでなく、フローティングテノン(Floating Tenon)という使い方もできます。これは材の両方にモーティス(ホゾ穴)をあけ、間にあらかじめ作っておいたテノンをはめ込むというものです。
Festoolのドミノのような使い方です。ドミノは端材を使って自分で作れます。テノン側の材料を完成した長さに切ることができるので、材料のムダが少ないです。強度的にもモーティス&テノンと同程度と考えられます。
この他にもテノンを2枚にしたり、4枚にしたりとかいろいろな使い方ができるようです。
同じLeighの治具でもダブテイル治具は使用方法が恐ろしく複雑で、マニュアルを精読した上でないと使いこなせません。ルータービットも数種類そろえる必要があります。実際の使用にあたって端材を使ってのテストカットも必要になります。
それに対してこのFMTは、使い方が直感的で調節方法もわかりやすいです。セットアップの時間も短いです。値段は$600と安くはないのですが、角ノミ盤よりは精度があって応用がきくと思います。