木工機械は精度を保つ為に定期的なメンテナンスが必要です。例えば、テーブルソーで、リッピング(縦切り)をするときに断面が焦げやすくなることがあります。原因は刃の切れ味が鈍っている他に、テーブルソーのアライメンントが狂っていることが考えられます。ここではダイヤルゲージを使って主にテーブルソーのアライメントの方法を中心に説明します。
治具はいたって簡単な構造です。ダイヤルゲージとそれを固定する治具のみです。私は市販品を買いましたが、自作もできます。私が購入したものは木工ショー特価で120ドルでした。ダイヤルゲージは1/1000インチまで測定ができます。(25.4ミクロン)ストロークは1インチ(25.4mm)です。ブレをみるので、デジタル式よりはアナログ式のほうが直感的で分かりやすいです。絶対的な精度は求めないので、安価なもので十分でしょう。これをアルミのバーなどを使って固定をします。市販のマグネットベースを使用してもいいと思います。
ショップの精度はテーブルソーからです。テーブルソーがすべての精度の基本になります。
まずはArbor(主軸)のブレを測定してみましょう。Saw Bladeをはずして、根元にダイヤルゲージをあて、軸を手で回します。これで軸のRun Out (ブレ)がわかります。
Arborの先端でも同様にチェックをします。ここではダイヤルゲージのチップ(先端)の形状をArborのネジの影響を受けないように、先に平なものに変えます。
Table Sawが正常であれば、ダイヤルゲージの針はほとんど振れず、1/1000インチ以下のはずです。ここが大きくブレているようであれば修理が必要です。この部分は自分ではどうにも修理ができないので、中古のTable Sawを購入するときは是非チェックしたいポイントです。
下の動画はArborのブレをみているところです。
つぎはいよいよTrunnionの調整です。テーブルソーは左側のマイタースロット(テーブルにある溝)がすべての基準になります。Saw Bladeもフェンスもすべてこのマイタースロットを基準に合わせます。
私が購入した治具にはマイタースロットにぴったりとハマる治具が付属しています。しかもスプリングが内臓されたボールのおかげで、マイタースロットの基準面にピッタリと押し付けてくれます。なかなか便利です。
またいろいろな形のチップ(先端形状)が付属しています。目的に合わせて、先端を交換します。
Saw Bladeを装着して、手前の位置でダイヤルゲージを当て、当てた位置にマーカーペンでマークをします。ダイヤルゲージの目盛りをゼロに合わせます。次にダイヤルゲージを奥に移動させ、同時に刃も手で回し、マークされた同じ位置で値を読みます。このノコ刃にマークをして、同じ位置で測定するというのがポイントです。ノコ刃やArbor(軸)のブレを相殺しています。
私のテーブルソーでは6ポイント近くずれていました。(0.15mm) 調整が必要です。
Trunnionの調整はテーブルソーの「Trunnionの調整」を参考にしていください。基本的にはTrunnionを固定しているボルトを緩め、角材を当てて、ハンマーでたたいて微調整をします。
このダイヤルゲージセットにはユニークな治具が含まれています。軸を回さずにSaw Bladeの反りをみるというものです。このスプリングが内臓されたナットを軸にセットします。スプリングがSaw Bladeを軸のフランジに押し付けますので、軸を回転させずにSaw Bladeのみを回転させることができます。従って、軸のブレを除いた、Saw Bladeのソリが測定できるわけです。私が愛用しているForrestのSaw Bladeは0.002"以内のブレでした。さすがForrestです。因に以前使っていたDewaltは0.010"、このテーブルソーを買ったときに付属していたDelta純正のSaw Bladeは0.050"と、かなり反っているのがわかります。
下の動画で、Arbor(軸)が回転していないのがお分かりかと思います。ソーブレードを指で回しています。
先ほど測定したArbor(軸)のブレとSaw Bladeのブレをうまく合わせれば、お互いにブレを相殺することができます。その場合はArbor,Saw Bladeに印を付けておき、いつも同じ位置でセットするようにします。下の動画はSaw BladeをArborにナットで固定した状態です。
マイタースロットの手前側と向こう側で差を測定すればいいです。フェンスの調整はTrunnionに比べたら簡単です。ネジを調節するだけです。フェンスは完全に並行にするのではなく、心持ち右に開くような感じで調節すると焦げを防止できます。(紙1枚を挟むぐらい)
このダイヤルゲージのセットには1/2インチの丸棒が入っています。これを使って、ドリルプレスの軸のブレを測定できます。もしブレが大きいようなら、先端のチャッックの部分を取り外し、テーパー部分をクリーニングした後にまた慎重に叩き込みます。
ドリルプレスのテーブルの平面度も測定できます。治具をチャックに固定して、前後左右で値を測定します。テーブルが軸と垂直ならば、値は同じになるはずです。私の持っているラジアルドリルプレスは軸が傾く構造です。軸を傾けた後はこの調節をして元に戻します。
1/2インチの棒をチャックにはさみ、軸を回してブレを測定します。ルーターを中古で購入するときもこれで製品の善し悪しをチェックできます。
ルーターテーブルやプランジ機能のついたルーターでは上記のブレの他に、軸がまっすぐに上下するかの測定もできます。「買ってはいけない」で紹介した、私の悪評高きルーターテーブルの、軸の上下の精度なんかひどいもんです。軸がまっすぐに上がりません。
ブレを見てみると、大ショック。今まではダマシダマシ使ってきましたが、これでは使い物にならないですね。
ジョインターの調整もできます。まずはIn Feed TableとOut Feed Tableの調整、それにOut Feed Tableとカッターの高さの調節もできます。
プレーナーの刃の調整もできます。テーブルと刃との平行度の測定、刃高の調整ができます。ちょっと測りづらいですが。
ダイヤルゲージを逆さまに取り付けます。
以上のように、ダイヤルゲージが1つあれば、ショップの機器類の調整ができます。このような目的に使うダイヤルゲージであれば、値段もそれほど高くないし、入手も容易です。ひとつあると便利な計測器です。これでショップの精度が上がります。
使っていて気付くのは、ダイヤルゲージはかなりAbuseされます。精密機器にも関わらず、ぶつけたり、軸に無理な力をかけたりしてしまいます。そういった意味でも、この目的では安物で十分だと思います。