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よく木工の作品につけられた能書きをみると「自然にやさしいオイル仕上げです。」「天然の木目を生かしたオイルで仕上げてあります。」などと、オイルで仕上げた作品が多く見られます。塗料メーカーや販売店の説明も「自然にやさしい・安全な・天然素材の」などの言葉が並びます。
ところがこのオイル仕上げというのは容器にかかれたラベルとは裏腹に中身は別物だったりします。木彫オイル、チークオイル、Danish Oil、オイルステインなどの「オイル」の文字に惑わされてはいけません。プロの木工家でもオイルとは全く別物の製品を使用しながら、堂々と「オイル仕上げ」と言ってる人もいます。しかし別物だから悪いというわけではなく、逆に使う場所、材質によっては良い場合もあります。
オイル仕上げというと「本物」「昔ながらの」「手作りの」などというイメージがあります。確かにオイルがもてはやされた時期もありましたが、現在では仕上げも多様化しており、昔ながらのオイルよりも化学合成された性能の優れた「別物」がたくさんあります。またこれらオイル仕上げが工業製品化されたのは1960年代以降です。
ここではオイル仕上げについて解説しています。まずは「オイル」と称されて売られているものを便宜上3つの種類に分けました。それぞれの特徴を説明します。この3種類の分類はあくまでも皆さんの理解を助けるためです。この分類に属さないオイルもありますし、私自身もオイル仕上げについてすべて理解しているわけではありません。 (^^;
ムリヤリ3種類に分けてみました。
かなり乱暴な分類ですが、それぞれの特徴を順に説明していきます。
昔ながらの本物のオイルです。亜麻仁油(raw linseed oil)、煮亜麻仁油(boiled linseed oil)や桐油(tung oil)などがこれらに分類されます。この本物のオイルに関しては日本語でもいろいろなホームページで解説がなされていますので詳しい特性等は省略します。
「オイル」と「別物」をミックスしたものです。両者の特徴をあわせ持ちます。よく知られたワトコオイルもこれに属します。「オイル」の割合が多いか「別物」の割合が多いかで特性が決まります。
オイルと名前は付いていますが、中身はオイルではありません。別物です。ほとんどが油性のウレタン系塗料をシンナーで薄めただけです。ホームセンターで「オイル」として売られているのはほとんどがこの「別物」か「ミックス」です。
オイルと別物の違いは硬度の違いを使って見分けることができます。缶の蓋などに付着して乾燥した部分を爪で押してみます。オイルは乾燥しても柔らかいので容易に爪の跡が付きます。一方ウレタン系の場合は硬いので見分けがつきます。下の写真はオイルの缶に付着した乾燥したオイルです。(使用後はしっかりと拭き取れって?)爪で押すとブニュブニュしています。
ある書籍で読んだ分別法では、ガラスの上にオイルをたらし乾燥させます。シワがよらずに乾燥したものはウレタン系つまり「別物」。乾燥したときにシワシワになるのが「オイル」またはこのオイルを含んだ「ミックス」だと書かれています。手持ちの「オイル」と称された製品で試してみましょう。左の写真がオイルをガラスの上に垂らした直後。右側が24時間後。左から「オイル」「ミックス」「別物」です。シワシワになるので容易に区別がつきますね。「オイル」は乾燥が遅いのでまだ中心部が液体のままです。
皆さんもお手持ちの「オイル」と書かれた塗料を分類してみましょう。少なくとも「別物」の区別はつきます。
それではこの3種類の中のどれを使えばいいのでしょうか?やっぱり本物の「オイル」がいいのでしょうか?ここからは私見です。話半分にしてご自分で判断なさってください。
私も以前は煮亜麻仁油を使用していましたが、最近は使用していません。理由は2つ。
一つ目は表面の保護作用がほとんどない。オイルが乾燥して硬化してもその硬度は極めて低く保護作用は期待できません。特に私が好んで用いるような安物の建築材やパインなどには向きません。
「別物」と「ミックス」は膜の硬いウレタンが入っていますので保護作用は大きいです。耐久性に関して言えば、UV硬化や触媒系の仕上げを使えるプロではなく、私のようなシロートの日曜大工で扱える仕上げでは現在のところやはりウレタン系に勝るものはないです。
二つ目は経時変化。時が経つとまず黄変します。その後黄色を超えて黒ずんできます。黄変は木が飴色になり味わいが増すのですが、黒ずみは色の薄い木に塗るとどうもこれが気になります。
このパインの木片は煮亜麻仁油だけを塗って4年経ったものです。下の白木のパインと比較して色の違いがおわかりでしょう。塗った直後はほとんど色は付きませんが、時を経るとこんなに黄変して黒っぽくなります。「別物」である油性ウレタンも黄変しますが、ここまで極端ではありません。
使用例をいくつ紹介します。まずは「オイル」から。この子供用の椅子は市販の2X4材を丸くして作りました。仕上げは煮亜麻仁油だけです。この写真を写した当時はまだ白かったのですが、現在ではかなり黒ずんできています。
このダイニング用のテーブルは「ミックス」仕上げです。毎日食卓として使っています。ときには熱いナベなどをそのまま置くこともあります。パインなので柔らかく傷も多数つきましたが、それはそれで味となっています。
このワードローブは「別物」で仕上げました。3回ぐらい塗ったのですが、刷毛塗りのウレタン仕上げとは違い、刷毛の跡が残らないし、ちょうど良い具合にビルドアップして(表面に膜をつくること)自然なとても滑らかな仕上がりです。現在ではもう少し黄変してきました。
「別物」はウレタン系塗料をシンナーで薄めただけと言いましたが、逆に言えばこれは自分でも作れることを意味します。油性のウレタン塗料を買ってきて、これをシンナーで薄める。これだけでも布で塗れるオイルのできあがりです。煮亜麻仁油を入れれば「ミックス」が作れます。顔料や染料を入れれば着色もできます。欧米の木工家はこのようにして自分でオイルを調合しています。
仕上げの種類と安全性に関してはしばしば話題になります。この安全性というのは2つの意味があります。
オイル仕上げに限らず、この状態ではほとんどの仕上げが有毒です。液体そのものも有毒ですし、油性仕上げは揮発成分も有毒です。唯一の例外がシュラックです。シュラックそのものは食品としても利用されるほど安全性は高く、溶媒としてエタノールを使用すれば、揮発成分も極端に大量でなければ問題ありません。
現在ホームセンターなどで入手できる仕上げに関して言えば、安全性に関しては問題ありません。例え食品が触れることがあってもです。サラダボウルフィニッシュなどという食器専用の仕上げ剤もありますが、一般の仕上げ剤でも安全性には変わりはありません。少なくともFDAの見解ではそうなっています。
難しいことはありません。まずは木の表面にオイルを塗ります。ジャブジャブ塗ってください。ハケで塗っても、布をぬれ雑巾のように使用してもいいです。そのまま10分から15分ほど待ち、あとは乾いた布で拭き取るだけです。煮亜麻仁油を使用した場合、拭き取った布は乾燥する際に熱を発し、自然発火する可能性があるので安全なところで広げて乾かしてください。24時間乾燥させ、表面のザラザラを600番の紙やすり、細かいところは0000番のスチールウールで滑らかにします。これを2から3回あるいは好きなだけくり返します。(「重ね塗りするほどにオイルが木に染み込む」というのはウソです)
本物のオイルだからといっていいというわけではありません。それしか無かった時代とは違い、現在ではいろいろな選択肢があります。私としては厳密にいえばオイルとは言えない「別物」のほうが本物の「オイル」よりもオススメです。(意外でした?)