シュラック仕上げについて詳しく解説しています。
シュラック=シェラック=セラック=Shellac です。英語の発音はセラックではなく、
シュとシェの中間のような発音です。本書ではシュラックと書いたりシェラックと書いたりします。
3000年以上昔に使われていた記録があるほど、歴史のある古い仕上げの手法です。
欧米のウッドワーカーからは魔法の仕上げと呼ばれ、今でもプロ/アマを問わず多くの人が愛用しています。
私も最近数年使ってみて、すっかりこの仕上げが気に入りました。もちろん他の仕上げ方法のように
シェラックにも長所、短所があります。それをよく理解の上で使ってください。あなたもきっとこの
仕上げ方法が選択肢の一つに加わることでしょう。
シュラックはインド、タイなど南方のアジアに生息するラック虫の殻から作られます。これら
ラック虫は樹木に寄生して樹液を吸います。そして自身の体を包んだり、産卵のために木の枝に
殻を作ります。このラック虫から分泌された、樹液をたっぷり含んだ殻がシェラックの原料に
なります。これを精製してシュラックを作るのですが、精製の度合いによっていくつかに分かれます。
精製度が高くなるにつれ、茶褐色から薄い黄色に変わっていきます。
精製度の低い順から、
通常、シェラックは固体です。これをアルコールに溶かして使用します。一方、ホームセンターで
売っているセラックニスはシェラックを原料にして作られたものもありますが、詳しい
原材料が書かれていないのでわかりません。他の成分が入っていたり、油脂分が残っていたり
防腐剤が入っている可能性があります。またラッカーとはシェラックを化学的に合成させて作った
もので、シェラックとは全くの別物です。シェラックが自然物で収穫や品質が一定しないことから
考え出されたものです。溶媒もアルコールではなく、有害なラッカーシンナーを使用します。
まず大きな長所が人体に対する影響が少ないということです。食品や医薬品にも使用されます。
粒状チョコレートの表面をツルツルにするのに使用されます。糖衣錠も同様です。酸に強くアルカリ
に弱いことから胃では溶けずに腸で溶ける錠剤に使われた時代もあったらしいです。
溶媒は通常のアルコールです。シェラックのフレークをアルコールに溶かして使用します。
エタノール、メタノール、イソプロピルなどなど。
バーボンを使用して自家製のオリジナルシュラックを作るツワモノもいます。(もったいない)
わたしも実験してみましたが、確かに作れます。ただアルコール中の水分が悪さをしますので
純度の高いアルコールを使ったほうがいいです。理想は値段が高いのですが、無水エタノールが
いいです。私はメタノールを5%程度含んだ変性アルコールを使用しています。安いので。
アルコールの種類によってシェラックの膜に特徴が現れます。メタノールを使用すると膜は硬く
なりますが、硬さゆえに表面に小さなヒビが入り、耐水製がやや劣ります。イソプロピル・
アルコールを使うと膜は柔軟性を帯び、耐水製が上がると言われています。
ただこの点については試したことはありません。
写真は手持ちのスピリッツでシュラックを溶かしてみました。良い子の皆さんはマネをしては
いけません。
環境にも人体にもやさしいです。とくに欧米ではHAPS(大気汚染物質)やVOC(有機揮発物質)
についての規制が厳しいです。
油性、水性、どちらの仕上げとも相性がいいです。一部の文献では相性が悪いと書いていますが、
これはあとで詳しく述べます。
渋い艶消しから鏡面のようなピカピカ仕上げまで、方法によって使い分けられます。
ホルノアルデヒドもよく遮断します。(これは手作り家具には関係ないですけど。)
アルコールベースなので乾燥がとても早いです。通常は1時間で乾きます。下塗りから完成まで
一日で仕上げることも可能です。
シュラックはアルコールを溶媒にするのは前述の通りです。これは可逆性の反応です。
したがって溶媒に出会うとまた溶けます。したがってアルコールには弱いです。
ただしこの短所が時には長所になります。失敗してももう一度アルコールで拭いてやり直す
ことが可能です。ムラになったり、液だれしたまま乾燥してしまったときでもやり直しがができます。
高熱にも弱く、熱い鍋などを置くと白濁します。
以上の理由からテーブルの天板には向きません。(特に我が家のテーブル)(^^;
ただテーブルの天板でもトップコートではなく下地には使用できます。
水分にも弱いと書かれている文献もありますが、それはシュラックの種類と溶媒の種類によります。
(例:プラチナ・シュラック+純度の高いアルコールの組み合わせは水にも強いです。)
脱脂したシェラックでは油性、水性、どちらの仕上げとも相性がいいです。
乾燥があまりにも早いのでそれがかえってムラになったりします。その場合は気温の低いときに
作業をしたり、リターダーと呼ばれる乾燥のやや遅い溶媒が発売されています。
残念ながらホームセンターでは扱っていないでしょう。
塗料専門店なら扱っているかもしれません。私はいつも通販で購入しています。
値段はオレンジ・シュラックで4円/グラム、スーパーブロンズで8円/グラム程度です。
どのぐらいのシュラックが必要かというと、例えばこのスパイラル・ステップは
ス−パ−ブロンズを1回、その上にオレンジシュラックを2回塗っていますが、
全部で100円程度です。その他にアルコールが必要です。
使用する分だけアルコールに溶いて使えばいいので、他の塗料のように残り物が固まって
しまったりしないのもシュラックの良いところです。
シェルフタイム(棚時間)といって、シェラックはアルコールに溶いた状態では長期保存はできません。
目安としてはだいたい半年と言われていますが、シェラックの精製度、アルコールの種類や純度によって
前後します。古くなると乾燥が遅くなり、粘度が高くなります。
使う前日にアルコールに溶くのがいいようです。